先日、大文字山で財布を失くした。
失くしたというか、置いておいたのを盗られたのだ。
はじめは警察に届けてくれると思っていたが、その気配がない。
カード類の不正使用もない。
…となると、財布から現金だけ抜き取って、財布がそこらへんに捨てられているのではないか?
藪の中に財布が投げ出されたままになっているのではないか。
仕事が一段落した日、もう一度、大文字山を捜索することにした。
さいわい、捜索範囲はそれほど広くない。
その人物が右利きだと仮定すると、財布を左手に持って、右手で紙幣を抜き取るだろう。
そうすると、左手に持った財布を自分の左側に投げる。
その人物は下山中だったから、「下を向いて左側」だ。
で、探したのだが、やっぱりない。
想定が間違っていたのか。
左利きなのか?
右側の斜面も探すことにした。
ま、結果から言うと、なかった。
だが、比較的最近に捨てられたゴミを見つけた。
コンビニのおにぎりの包みが散乱している。
「やれやれ…」と拾っていた。
…と、そこに!
ナメコだ!
大文字山でナメコ!
じつは先日来、それらしいのを見たが、確証がなく慎重になっていた。
しかし、これは正真正銘のナメコだ。
こんなお膝元にナメコがあるなんて!
何かに齧られた痕がある。
まだこれから成長しそうな幼菌もある。
ナメコが収穫できたことも、もちろん嬉しいが、それ以上の喜びがあった。
近年、ナラ枯れ、伐採、鹿の食害、治山工事…と大文字山の自然環境が劣化していく一方だった。
かつて存在した山菜やキノコが姿を消す一方だった。
そんな中で、大文字山にナメコである。
「わたしの知らない大文字山が、まだあったんだ」
ということが驚きであり、喜びである。
ゴミ拾いのお返しだろう。
財布を失くして気を落としているわたしを、大文字山が慰めようとしてプレゼントしてくれたのだろう。
いろいろあった一年だが、終わりがよければ満足できる。
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