大津市堅田の浮御堂(満月寺)に行った。
浮御堂そのものに興味があったのは当然だが、どこか原稿にとりくむことのできる場所を求めてきたのだ。
浮御堂から北方(湖西側)を望む。
比良山にも雪がかぶっているが、やはり今年は少な目だ。
それはそうと、湖岸の石垣にイタリアの国旗がたなびいている。
イタリア料理店があるのだ。
あそこに行ったら、さぞかし眺めがいいだろう。
原稿チェックにはもってこいの場所だ。
事前にネットであの店を見つけていたのだ。
その店は「ペコリーノ」。
行ってみると、満席。順番を待っている人もいる。
平日だし、13時半を過ぎていたので、あなどっていたが、かなりの人気店らしい。
そんなに時間を浪費するわけにもいかない。
残念だが、この店はあきらめて、駅前の普通の喫茶店にでも行くことにする。
…と言いながら、せっかく堅田に来たのだから、と周辺を散策することにする。
とくに、バス停の前の「湖族の郷資料館」には惹かれるので、立ち寄ってみる。
「湖族」とは初耳で、何のことかわからなかった。
はじめ、琵琶湖の魚介類の資料館かと思った。
ところが、どうやら、海の「海賊」に対する湖の「湖賊」がいて、それを字を改めて「湖族」と書いているらしい。(言われなきゃわからないが、そういう説明は目に入らなかった)
資料館の中には、この地の水運・漁業などに関するものが展示してあった。
つい先日、竹細工の映画を見たばかりなので、手仕事の民具に見入ってしまった。
資料館の人が、周辺の見所を教えてくれた。
その中に祥瑞寺があった。
祥瑞寺という寺の名前を聞いてもピンとこなかったが、一休宗純が修行した寺といえば思い出す。
水上勉の『一休』で読んだ。
周辺には寺社が多いが、すべてを回っている余裕はない。
しかし、祥瑞寺には行ってみる気になる。
「一休」という道号を得たのも、この寺にいた時だった。
湖族の郷資料館でもらったパンフには「反骨・風狂の禅僧一級誕生の寺」と書いてある。
とはいえ、境内に入って、とくに見るべきものもなし。
あえて言うなら、松尾芭蕉の句碑。
「朝茶飲む層静かなり菊の花」の句を詠んだのが、ここ祥瑞寺だった。
昨年末、芭蕉の句はすべて目を通したばかりだが、まったく記憶にない。(汗)
近くには都久夫須麻神社もある。
弁財天を祀っている。
そうこうしているうちに30分くらい経過した。
湖岸に下りられたので、下りてみる。
風は穏やかなのに、意外と波が激しい。
それにしても、やはり「ペコリーノ」に未練があり、もうそろそろ席が空いているかな?と思う。
原稿チェックが目的なので、席につけさえすればよい。
注文の品物が出てくるのは待たされてもいい。
行ってみると、席は空いていた。
中へ通される。
14時を少しまわっていたのでランチタイムは終わっている。
ビールを注文した。
客は、わたし以外は全員 女性。
平日の午後なので、男が少ないのはわかるが…それにしても…
女性たちの大半は主婦層。
女だけになった時の、彼女たちのおしゃべりが喧しい。
見た感じ、ほとんどの客の皿・カップは空になっている。
食事・喫茶が終わっても延々と話しこんでいるわけだ。
これでなかなか席が空かないのだ。
一番眺望のいい湖に面したカウンター席には座れなかった。
そのカウンター席に座っている主婦たちは、隣どうしで話し込んでいる。
つまり、全然、窓の外の景色を見ていないのだ。
眺望そっちのけで話し込んでいるヤツらに眺望のいい席を占領されている不条理。
しかし、わたし自身も、原稿チェックに集中しだしたら眺望そっちのけになってしまうだろうから、この点に関してはお互い様か。
眺望のいい店で、ビールで優雅にくつろぎながら仕事…と思っていたが、いやはや、女たち・主婦たちの活発な座談会のおかげで目論見は外れた。
耳栓をして仕事をした。
それなりに集中できた。
一区切りついたので、「もうそろそろ出ようか」と思った頃、窓際席の客が帰った。
店員が「よろしければ窓側に」とすすめてくれた。
せっかくなので、窓際で仕事を続行することにした。
2杯目のビールを注文する。
やかましい女たちがいない曜日や時間帯があるのだろうか。
そんな時に再訪してパスタとワインと眺望を楽しみたい。
原稿ははかどった。
『大文字山を食べる』の改訂増補版のゲラのチェックなのだった。
かなり手を入れた。
それなりに良い旅になった。
(おわり)
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